ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント_ 東京都美術館パート2

博物館

前回(東京都美術館パート1)に続きます。

Section3 ファン・ゴッホを収集する

1. 素描家ファン・ゴッホ、オランダ時代

1881年4月~1885年11月頃まで、ゴッホは、エッテン、ハーグ、ニューネンなど出身国オランダの都市や農村を移り住みました。
田園風景や農民、労働者を主題に、「農民のくらし」を描いています。
代表作の一つ、「ジャガイモを食べる人々」を含む素描の作品が展示されています。

2.画家ファン・ゴッホ、オランダ時代

この時代は、まだ色彩が暗く、緑や茶色など、黒以外の部分も、暗めの色で描かれています。
「麦わら帽子のある静物」は、ゴッホが画家になる決心をしてから.2年ほどしかたっていない時期に描かれた油彩画です。
光や、帽子の影などが丁寧に描かれています。
他に、「白い帽子を被った女の顔」などが有名です。
また、ゴッホが鳥の巣に感心し、ニューネンの子どもたちにお小遣いを渡して、鳥の巣を持って来させていたというエピソードは、興味深く感じました。

3.画家ファン・ゴッホ、フランス時代

-1.パリ
ベルナール、ロートレックらと知り合い、才能をぶつけ合うことで成長していきます。
日本の浮世絵に魅力を感じ、収集しました。
また、印象派と交流して、明るい色彩の絵を描くようになります。

「青い花瓶の花」は、青い花瓶いっぱいに生けられた、色とりどりの花々が描かれています。
ルドンにも、「青い花瓶の花々」という、同じような主題の作品があります。
青いフラワーベースだとどの色の花もひきたつからでしょうか、それともこの頃の流行だったのでしょうか。

「レストランの内部」は、家具類以外の、壁などが点描で描かれています。
新印象派の描き方を実験的に取り入れたのでしょうか。
同じ会場に展示されていた、スーラやシニャックの作品と比較すると、点が大きく、緑が効果的に使われているようです。
ゴッホ独特の新印象派風の作品に仕上がっているように感じました。

「石膏像のある静物」
机の上に、石膏像、2冊の本、バラの小枝が置かれていて、背景は濃い青です。
2冊の本は、青い方がモーパッサンの『ベラミ』で、黄色い方がゴンクール兄弟の『ジェルミニー・ラセルトゥ』で、どちらもゴッホの愛読書です。

-2.アルル
ゴッホが、パリの生活で精神をすり減らし、アルコール依存症に悩まされ、太陽の輝きと美しい風景を求めたのが、アルルでした。
後に「黄色い家」として有名になる家を借りて、ゴーガンを待ちわび、その後、決別。
精神を大きく崩していきました。

「レモンの籠と瓶」
ゴッホのイメージがある、黄色を多く使った静物画です。
レモンは勿論のこと、背景も、テーブルクロスも黄色です。

「種まく人」
ミレーの作品に登場する、収穫のイメージの作品です。
画面奥中央の、黄色の眩しい太陽が印象的です。

-3.サン=レミとオーヴェール=シュル=オワーズ
1889年5月~1890年5月頃は、ゴッホが精神療養院で生活していた時代です。
入院中も精力的に製作活動を行い、「夜のプロヴァンスの田舎道」など、代表作の多くを描いています。
また、1890年5月~1890年7月までは、肖像画に描かれているガシェ医師を頼り、オーヴェールを訪れました。亡くなるまでの2か月間で、「医師ガシェの肖像」、「ピアノを弾くマルグリット・ガシェ」、「オーヴェールの教会」、「ドービニーの庭」など多くの作品を描き、生涯を閉じました。

「サン=レミの療養院の庭」
庭いっぱいの植物が描かれています。療養中、庭の草花や木々を眺めるのを楽し
みにしていたのでしょう。
「夜のプロヴァンスの田舎道」



メイ
メイ

やっと会えました!!

代表作の一つである、糸杉の作品です。
今回、この作品と、後述の「黄色い家(通り)」を見ることが、一番の目的だったので、本当に嬉しかったです。
もう二度と会えないかもしれないと思い、他のお客さんに迷惑にならないように気を付けながら、  作品の正面に立ち、じっくりと鑑賞してきました。
画面中央に、糸杉の巨樹があります。
右奥の家の大きさと比較して、高さ30メートル以上あることになります。
糸杉は死のモチーフだそうですが、ゴッホの糸杉には、あまり怖さや暗さを感じません。
むしろ、外出できることを喜んでいるような高揚感に近いものを感じました。
糸杉の左に金星、右に三日月が輝いています。
家の奥にも3本の糸杉があり、家の手前には荷馬車が、画面やや右の一番手前には、農具を手にした2人の農民が歩いています。
主役の糸杉は、枝をねじるように、上へ上へと高く伸びています。
それに合わせるかのように、道や空もねじれるような筆致で表現されています。

「花咲くマロニエの木」
今回の企画展では、「夜のプロヴァンスの田舎道」とこの作品が展示の最後を飾っていました。
この作品は、ゴッホの作品集などでも見たことがなく、“初めまして”だったのですが、むしろ、「夜のプロヴァンスの田舎道」以上に魅力を感じました。
作品の解説パネルによると、ゴッホは花を描くことが好きなのに、花の季節を見逃してガッカリしていたところ、この2本のマロニエの木に白い花が満開になっていることに気付き、大喜びで描いたということです。
マロニエの枝ぶりは力強く、葉は青々として、白い花もいっぱいに咲いていて、生命力を感じさせられます。空も青く晴れていて、生きる喜びを表現しているかのようです。
また、花を楽しみにしている様子が作品からも伝わってきて、ゴッホは、生涯、子どもの心を持っていた人なのだな、と思い、微笑ましく感じました。

Section4 ファン・ゴッホ美術館のファン・ゴッホ家コレクション: オランダにあるもう一つの素晴らしいコレクション

今回、ファン・ゴッホ美術館のコレクションから4点、来日しています。
「ニューネンの牧師館」、「モンマルトル 風車と菜園」、「サント=マリー=ド=ラ=メールの海景」、空と海が美しい青で描かれており、波はところどころ緑で表現されていて、白い波しぶきが上がっています。
画面中央やや上に白い帆のヨットが、遠くにも2艘(?)見えます。

「黄色い家(通り)」
アルルで、ゴーガンと一緒に暮らし、共に創作活動をしようと楽しみにしていた家を通り側から見たところを描いた絵です。
数棟の建物が描かれているのですが、弟テオ宛の手紙に、「左手には緑の鎧戸が付いたピンクの家がある」(ゴッホ展図録190ページより)と書かれているので、角の2階建てがゴッホの借りた家なのかもしれません。
確かに、隣家はレストランのように見えますし、窓の特徴が「アルルの寝室」の絵と一致します。

◆さいごに
憧れの作品に会えることは、特に、地方在住の私にとっては、とてもありがたく、幸せな体験です。
「黄色い家(通り)」は、16年ぶりの来日です。
「夜のプロヴァンスの田舎道」も、もう二度と会えないかもしれません。
大好きな作品たちをしっかりと心に焼き付けて、赤レンガの会場をあとにしました。
メイ
メイ

ミュージアム・ショップで図録を購入して正解でした。
写真がきれいで画集並みのクオリティですし、解説パネルの内容はすべて書いてあります。

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