TRIO パリ・東京・大阪 モダンアートコレクション ~見て、比べて、話したくなる。~
東京、竹橋の東京国立近代美術館で開催中の企画展、「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション」を見に行ってきました。
東京国立近代美術館は、原田マハさんの作品にしばしば登場するので、楽しみにしていました
この企画展は、フランス、セーヌ川のほとりに建つパリ市立近代美術館、皇居にほど近い東京国立近代美術館、大阪市中心部に位置する大阪中之島美術館の三つの美術館が有する豊かなモダンアートのコレクションの中から、共通点のある作品でトリオを組み構成するという、ユニークな展示を行っています。
総勢110名の作家による、絵画、彫刻、版画、素描、写真、デザイン、映像など150点あまりの作品で34のトリオを組んで紹介しています。
いずれも名品ぞろいで、美術の教科書に掲載されていた作品や、テレビで紹介されたことのある作品など、会いたかった作品に出会えるチャンスでもあると思います。
Ⅰ 開催概要
・会場:東京国立近代美術館 1階企画展ギャラリー
〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1
東京メトロ東西線竹橋駅より徒歩3分
・会期:2024年5月21日(火)~8月25日(日)
・休館日:月曜日(ただし7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火)、8月13日(火)
・開館時間:10:00~17:00(金曜・土曜は10:00~20:00)
入館は閉館の30分前まで
・観覧料
当 日 券 | 団体料金 | |
一 般 | 2,200円 | 2,000円 |
大学生 | 1,200円 | 1,000円 |
高校生 | 700円 | 500円 |
団体料金は20名以上。いずれも消費税込。
中学生以下、障がい者手帳をお持ちの方とその付添者1名は無料。
それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障がい者手帳等をご提示ください。
・巡回:大阪中之島美術館
2024年9月14日(土)~12月8日(日)
・お問合せ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
*会期中、一部作品は展示替えがあります。
東京会場 前期:5月21日~7月7日
後期:7月9日~8月25日
Ⅱ 三つの美術館について
パリ市立近代美術館
シャンゼリゼ通りとエッフェル塔の間に位置するパリ市立近代美術館の宮殿は、1930年代の壮麗な建築の一例。
15000点以上の作品を所蔵するパリの重要な文化施設であり、フランス最大級の近現代美術館のひとつ。
東京国立近代美術館
東京の中心、皇居のお濠を前に建つ、日本で最初の国立美術館。
最大の特徴は、横山大観、上村松園、岸田劉生らの重要文化財を含む13000点を超える国内最大級のコレクション。
19世紀末から現代までの幅広いジャンルにわたる日本美術の名作を、海外の作品もまじえて多数所蔵。
大阪中之島美術館
2022年に大阪市中心部に開館した、新しい美術館。黒いキューブが宙に浮いているような斬新なデザインの建物。
19世紀後半から今日に至る、日本と海外の代表的な美術とデザイン作品を核としながら、地元大阪で繰り広げられた豊かな芸術活動にも目を向け、絵画、版画、写真、彫刻、立体、映像など多岐の領域に渡る6000点超を所蔵。
とくに、日本最大の佐伯祐三コレクションや、大阪で活動した具体美術協会(具体)のリーダー吉原治良の作品が有名。 (企画展ホームページ参照。)
Ⅲ 見どころ
二度とないかも!? パリ、東京、大阪の名品による夢のトリオ展が実現
パリ、東京、大阪。個性的な三都市を代表する三つの美術館による共同企画、「TRIO展」。34のテーマに沿って、それぞれのコレクションからぴったりの作品をセレクト。
本展のためだけに特別なトリオを組みました。
三つの美術館を代表する作品たちの一期一会がモダンアートの新しい魅力を開きます。
(企画展ホームページ参照。)
たくさんのトリオたちのなかから、とくに魅力を感じた、または会いたかった作品が含まれているいくつかをご紹介したいと思います。
コレクションのはじまり
・安井曽太郎「金蓉」1934年 東京国立近代美術館MOMATコレクション
・佐伯祐三「郵便配達夫」1928年 大阪中之島美術館より
企画展の幕を開けるのは、「コレクションのはじまり」と題して、3館のコレクションのはじまりを刻んだ作品の中から、椅子に座る人物の肖像画を選んで展示しています。
展示室に入ってすぐ、会いたかった作品の一つ、佐伯祐三の「郵便配達夫」が出迎えてくれました。
この作品は、佐伯が亡くなるわずか5か月前に描かれたもので、とても苦しい時期であったにもかかわらず、モデルの佇まいのためか、鑑賞者を優しく出迎えてくれるように感じます。
佐伯は、雨の日に戸外で制作してかぜをこじらせ、パリの自宅で過ごしていました。
そこに郵便を届けに来た立派な白髪の郵便配達夫に創作意欲を刺激され、モデルになってほしいと頼んだところ、後日、再び来てくれたので、この作品を描いたそうです。
佐伯の最期の作品の一つになります。
このトリオでは、ほかに、パリ市立近代美術館からロベール・ドローネーの「鏡台の前の裸婦(読書する女性)」と安井曽太郎の「金蓉」が紹介されていました。
ドローネーは、エッフェル塔をテーマにした作品で有名です。
1910年頃からキュビスムの運動に参加し、ピカソやブラックの作品の画面がほとんどモノクロだったのに対し、ドローネーはキュビスムに明るく豊かな色彩を取り入れました。
このカラフルで美しい作品を含め、今回の企画展には、パリ市立近代美術館から多くの素晴らしい作品が来ていて、貴重な体験ができたと思っています。
川のある都市風景
・小出楢重「街景」1925年 大阪中之島美術館より
・小泉癸巳男「昭和大東京百図絵」より聖橋ほか5作品 1931~1936年 MOMATコレクション
ここでは、パリ市立近代美術館からアルベール・マルケの「雪のノートルダム大聖堂、パリ」が展示されていました。
マルケは、ルオーやマティスと同じく、ギュスターヴ・モローの教えを受け、当初はフォーヴィスムの画家でしたが、後にフォーヴから距離を置くようになりました。
グレーや薄い青といった落ち着いた色彩と穏やかなタッチでパリの街やノルマンディ、地中海沿岸などの風景を描きました。この作品にも、そういった特徴が見られると思います。
小出と小泉の作品は、急激に都市化が進み、変化し続けたかつての二つの都市を表現しています。
都市と人々
・長谷川利行「新宿風景」 1937年 MOMATコレクション
・モーリス・ユトリロ「セヴェスト通り」1923年 パリ市立近代美術館より
ユトリロの作品も独特の雰囲気をもっているので、楽しみにしていました。
ユトリロが描く風景画は、寂寥感が漂っているように見えるところが佐伯祐三の作品と似ているように感じます。
ユトリロは、母親の育児放棄で寂しい少年時代を過ごし、その後、アルコール中毒に苦しんで、生涯を通して精神病院への入退院を繰り返さざるを得なかったことを知り、画家の寂しい心情が作品の中の風景に表現されているように感じました。
しかし、ユトリロは72歳まで生きたので、苦しみながらも頑張って人生をまっとうした人だという印象を受けました。
都市の遊歩者
・松本竣介「並木道」1943年 MOMATコレクション
・佐伯祐三「レストラン オテル・デュ・マルシェ」1927年 大阪中之島美術館より
ここでも、ユトリロと佐伯祐三の作品が見られました。
やはり似ていますが、ユトリロの作品の方には青空が描かれているため、画面はやや明るく感じられます。
ユトリロと松本竣介の作品は、人物が黒い影のように表現されていて、佐伯の作品には、人物は描かれているものの、画家の関心は、古びて趣のある建物の方へ向かっているように感じられます。
「オテル・デュ・マルシェ」はフランス語で市場のホテルという意味なので、古くて安い、‘’下宿‘’に近い施設なのでは、と思いました。
なお、松本竣介も30代で亡くなっています。
佐伯祐三「レストラン オテル・デュ・マルシェ」
近代都市のアレゴリー
必見!「電気の精」
・池田「戦後の大阪」1951年
前田藤四郎「脚と機械(廊下に立つ婦人)」1928年頃
前田藤四郎「屋上運動」1931年
前田藤四郎「ベンチレーターと子供」1931年頃 大阪中之島美術館より
・ラウル・デュフィ「電気の精」1953年 パリ市立近代美術館より
10点組のカラー・リトグラフ
ここで注目したいのは、なんといっても、デュフィの「電気の精」!!
本物は、パリ市立近代美術館にある巨大壁画なので、一生見られないだろうと思っていたところ、リトグラフというかたちで思いがけず会うことができたので、感激のあまり、声が出ちゃいそうになりました。
描かれている人物を一人一人丁寧に眺めていたのですが、周囲にはそれほど興味をひかれている様子の人は見られなくて、一人でテンションが上がってしまいました。
古賀春江「海」
豆知識ラウル・デュフィと「電気の精」について
ラウル・デュフィ(1877年~1953年)は、フォーヴィスムに分類されるフランスの画家で、「色彩の魔術師」と称されました。
マティスに感銘を受けましたが、デュフィの作風は他のフォーヴィスムの画家たちと違った独自の世界観をもっています。
明るく透明感のある色彩と、リズム感のある描線が特徴で、モティーフの多くは、音楽や海、競馬場やバラとなっています。
この企画展に展示されている「家と庭」にも、中央にバラが描かれています。
1938年、61歳のとき、パリ電気供給会社の社長の依頼で、パリ万博「光と電気館」の装飾に、フレスコ画の巨大壁画「電気の精」を描きました。
幅100メートル×高さ20メートルで、主題は自然科学史と神話を融合させたものです。
古代の哲学者、アリストテレス、タレス、数学者アルキメデスの3人にはじまり、人類に貢献した108人の科学者、技術者、哲学者などの姿と、製鉄所、造船所、蒸気機関車などが描かれ、最後に、白い女神のような姿の電気の精が、人類を未来へ導くように描かれています。
*この二作品は今回の企画展では、展示されていません。
都市のグラフィティ
バスキアと佐伯のストリートアート対決!!
・ジャン・ミシェル・バスキア「無題」1984年 大阪中之島美術館より
・フランソワ・デュフレーヌ「4点1組」1965年 パリ市立近代美術館より
バスキアの作品を見るのは初めてですが、日本に関心をもっていたということは耳にしていました。
図録に掲載されている写真ではわかりにくいのですが、美術館で実物を見たところ、漢字らしい文字が書いてある部分がありました。
佐伯の作品は、二回目のパリ滞在中で、秀作が多いとされている時期に描かれたものです。
壁よりも広告そのものに魅せられて描かれたようで、広告の文字がとても多く、乱舞しているように感じられます。
佐伯祐三「ガス灯と広告」
空想の庭
この企画展を見に来た一番の目的のデュフィの作品
・辻永「椿と仔山羊」1916年 MOMATコレクション
・アンドレ・ポーシャン「果物棚」1950年 大阪中之島美術館より
これら三人の画家には、植物に深いゆかりがあるという共通点があります。
デュフィは植物園の近くに住み、動植物モティーフのテキスタイルデザインを手掛けました。辻永は植物学者を志したことがあります。
ポーシャンは画家になる前、園芸の仕事をしていました。(展覧会公式ホームページを参照。)
『芸術新潮』2024年1月増刊号でデュフィの「家と庭」を目にして、「美しい夢の中の庭のよう」と思い、実物に会えるのをとても楽しみにしていました。
実物は、縦117センチメートル×幅90センチメートルと、想像していたよりも大きかったのですが、主題が「家と庭」なので威圧感はまったく無く、むしろ緑がいっぱいの庭に導かれるような、心地よい没入感を感じました。
全体に緑、青、白と、色彩が限られているなかで、中央のバラだけ濃いピンクなので鑑賞者の目がそこに導かれます。
ラウル・デュフィ「家と庭」
現実と非現実のあわい
・有元利夫「室内楽」1980年 MOMATコレクション
・ルネ・マグリット「レディ・メイドの花束」1957年 大阪中之島美術館より
アンリ・ルソー「蛇使いの女」
ブローネルの「ペレル通り2番地2の出会い」を最初に見たとき、アンリ・ルソーの「蛇使いの女」と見間違えました。
同様に、マグリットの「レディ・メイドの花束」も、ボッティチェリの「春」に描かれている女神に似た女性が描かれていると思いました。
その印象は、ある意味当たっていて、展覧会公式ホームページによると、このトリオは、過去の名画に画家が自分の分身を描きこむことで、現実と非現実のあわい(=あいだという意味に近い)を出現させています。
ブローネルは、かつてアンリ・ルソーが住んだ、ペレル通り2番地2に引っ越したことから、ルソーの「蛇使いの女」(1907年、オルセー美術館)に、自らが生み出した、巨大な頭部と二つの体、六本の腕をもつ「コングロメロス」を登場させています。
ボッティチェリ「春」(一部を拡大)
一方、マグリットは、彼の作品にしばしば登場する山高帽の男の背に、ボッティチェリの「春」(1482年頃、ウフィツィ美術館)の花の女神フローラを重ねました。
マグリットの謎めいた絵画は、映画で何度か目にしたことがあり、一度作品を見てみたいとかねてから思っていたので、今回、念願がかないました。
モデルたちのパワー
・萬鉄五郎「裸体美人」(重要文化財)1912年 MOMATコレクション
・アメデオ・モディリアーニ「髪をほどいた横たわる裸婦」1917年 大阪中之島美術館より
ここで紹介されている、マティスと萬の作品の女性は、左右が逆ですが、ポーズがよく似ています。
三作品とも、モデルの女性は大胆なポーズをとっており、「どうよ?」というような、みなぎるパワーを感じます。
マティスの作品は、背景の壁に飾られた布のデザインや、椅子、青い壺、モデルの衣装と右足首のアンクレットなど、オリエンタルな雰囲気を演出するため、よく吟味して選ばれています。
私は、マティスのアイディアだと思っていたのですが、彼が敬愛したルノワールからの影響のようです。
オダリスクとは、トルコの後宮に仕えた女性のことで、18世紀以降の東洋趣味の影響で、よく画題になり、アングル、ルノワール、マティスなどの作品が有名です。
アンリ・マティス「椅子にもたれるオダリスク」
アメデオ・モディリアーニ「髪をほどいた横たわる裸婦」
美の女神たち
藤田とローランサンの女神競演!
・マリー・ローランサン「プリンセス達」1928年 大阪中之島美術館より
・ジャン・メッツァンジェ「青い鳥」1912~1913年 パリ市立近代美術館より
ここで紹介されている藤田嗣治の作品には、五人の女性が描かれています。
女性たちの後ろにあるものは、ベッドでしょうか?この作品には、藤田の作品の特徴といわれる、「乳白色、女性、猫」の三要素プラス画面右下にスピッツのような白い小型犬が見られます。
一方、ローランサンの作品には、華やかなファッションに身を包んだ四人の女性たちが動物とともに描かれています。
同時代にパリで活躍した藤田とローランサンは親しかったようです。
プリミティヴな線
・パウル・クレー「黄色の中の思考」1937年 MOMATコレクション
・菅井汲「風の神」1954年頃 大阪中之島美術館より
‘’プリミティヴ‘’とは、原始的なもの、原型などという意味です。
三作品とも、古代の壁画に描かれている作品のような印象を受けます。
パウル・クレー(1879年~1940年)はスイスの首都ベルン出身。チュニジアを旅行した際、ヨーロッパにない光や自然に触れ、色彩への関心を示し、生涯の主題としていったそうです。
また、この展覧会の最初のコーナーで作品が紹介されている、ロベール・ドローネーから影響を受け、フォルムと記号による抽象的な作品、絵画と文字の融合を試みた詩的な文字絵など独自の表現形式を展開しました。
この「黄色の中の思考」にも、そのような特徴を見ることができると思います。
軽やかな彫刻
・北代省三「モビール・オブジェ(回転する面による構成)」1953年 MOMATコレクション・アレクサンダー・カルダー「テーブルの下」1952年 パリ市立近代美術館より
三作品とも、抽象画を三次元で表現したもののようで、薄い金属を使用しているため、鑑賞者に軽やかで涼しげな印象を与えます。
アレクサンダー・カルダー(1898年~1976年)のモビールは、原田マハさんの短編小説『群青』で知っていて、実物を見るのを楽しみにしていました。
カルダーはアメリカ出身で、28歳のときにパリへ渡り、サロン・ド・ユーモアリストに針金細工で動かす「カルダーのサーカス」を制作、出展し、芸術家や大衆を熱狂させました。
モンドリアンの抽象絵画との出会いがモビール誕生のきっかけとなり、交友のあったマルセル・デュシャンによって‘’モビール‘’と命名されました。
日常生活とアート
・ジャン=リュック・ムレーヌ「For birds」2012年 パリ市立近代美術館より
・倉俣史朗「Miss Blanche(ミス・ブランチ)」
デザイン1988年 制作1989年 大阪中之島美術館より
このトリオの作品は、「日常生活に存在するものなのか?アートなのか?」と考えさせられる作品という点が共通しています。
冨井の作品は、さまざまな色の折り紙をホチキスで綴じてロールの形状を形作ったもので、おそらく誰でも、幼稚園などで制作した経験があるものであり、色彩を考えて配置するとアートになり得るものだと考えさせられます。
ムレーヌの作品は、一見すると鳥かごです。
しかし、隙間や開口部はガラスで密閉されていて、中に入れない=外にいることが不自由なのか?と考えさせられます。
倉俣の「ミス・ブランチ」のブランチとは、最初、フランス語の‘’白‘’を意味しているのかと思ったのですが、そうではなくて、テネシー・ウィリアムズによる戯曲『欲望という名の電車』のヒロインの名前から名付けられたそうです。
70脚あまりが制作され、MOMAや香港のM+など、世界の有名美術館に収蔵されています。
透明なアクリル樹脂の中に赤いバラの造花が閉じ込められているようなデザインの椅子で、背もたれ部分にだけバラは入っていません。
今年の3月に放送された「日曜美術館」で初めて見て、どうなっているのか気になっていたので、側面から観察してみたところ、アクリルの厚みの中心部に造花が位置するように作られていました。
さすがに、美術館の職員の方が見ている前で、座面の下からのぞき込む勇気はありませんでした。
「家具なのか?アートなのか?」については「日曜美術館」の番組の中でも問題提起されていましたが、判断が難しいところだと思います。
倉俣は生前、「人間に対しての栄養になるものを届けたい」と言っていたそうです。
つまりは楽しんでほしいということなのではないかと思うので、家具として日常生活で使用しても、美術館でアートとして鑑賞しても、どちらでも、心の栄養になればいい、というのが答えではないか?という気がします。
Ⅳ TRIO展を鑑賞して
今までに訪れたことのある美術展では、二人のアーティストの作品を比較展示したり、印象派展のようなグループ展などはよくありましたが、三つの美術館から一作品ずつ選んで、同じテーマでトリオを組み、比較展示するという試みは、斬新で、興味深いと思いました。
また、関東在住だとなかなか訪問することが難しい、パリ市立近代美術館と大阪中之島美術館の名品の数々を鑑賞することができたのも貴重な体験で、それらの作品から多くを学ばせていただきました。
先日、地域の美術館のある講演会で、世界的な諸事情から、今後は、海外の美術館から作品を借りることが難しくなり、国内の美術館の所蔵作品を中心に企画展を開催したり、コレクション展示を中心に行うことが重要になっていく、というお話を耳にしました。
今回、鑑賞した作品の中で、佐伯祐三の「郵便配達夫」が鮮烈に心に残りました。
佐伯は、ヴラマンクに認められるために苦しみ、描き続けたそうですが、この作品のことを思うと、モデルの人柄のためか、温かいイメージが浮かんでくるようです。
展示作品を通して、遠いパリや大阪に思いを馳せることができたのも、素晴らしいひとときでした。
【参考資料】
・「TRIO パリ・東京・大阪 モダンアート・コレクション展」図録
・「佐伯祐三・ヴラマンク展」図録 1980年 東京新聞
・「創作において自由なる競創展」図録 2023年 創絵社
*使用した写真は、安井曽太郎の「金蓉」、古賀春江の「海」、アンリ・ルソーの「蛇使いの女」、ボッティチェリの「春」は無料使用可能のパブリックドメインのもので、建物の外観と風景は自分で撮影したもの、残りはすべて自前のカレンダーや絵葉書のものです。
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