かわいい はにわたち  高崎市、上毛野はにわの里公園

博物館

八幡塚古墳の埴輪群像の構成

今回は、榛名山東南麓の遺跡から出土した埴輪の特徴や移り変わり、また、八幡塚古墳の埴輪群像の構成についてお話しします。

1. 時期による移り変わり

古墳時代は、諸説ありますが、おおむね、3世紀半ば~7世紀末頃までとされることが多いようです。埴輪は、5世紀頃には、家や甲冑、水鳥の埴輪などが作られました。
6世紀に入ると、太刀、盾持ち人、武人、巫女、さまざまな人物やさまざまな動物の埴輪が作られました。
だんだん種類が増えていったことがわかります。

2. 種類別の埴輪の特徴

①王の埴輪
・冠のデザインが1つ1つ違います。
・服や帯の模様、腰に帯びた太刀などが華麗です。
・座り方や手つきに威厳があります。

② 女性の埴輪
・杯や壺をかかげているものが多いです。
・合掌するような手つき、刀や弓を携えるもの、棒状の器具を振り上げるものなどは、さまざまな儀式の形を表現しているのかもしれません。
女性の頭に載っている板状のものは、盛装のときに行ったヘアスタイルです。
・西日本と東日本の女性の埴輪は、違った特徴をもっています。
西日本の女性の埴輪は、長い布を巻き付けた掛衣(注1)をまとい、立ち姿のものが多いです。
東日本の女性の埴輪は、襷を掛けているものが多く、立ち姿、座像など多様です。
椅子にちょこんと座った、かわいらしい姿の埴輪もあります。

③ 楽人埴輪
楽人とは、楽器を奏でる人のことです。楽人埴輪のなかでは、琴を弾く人が
最も多いです。これは、琴が、貴人が神のお告げを聞くときの道具であったためと考えられています。
ほかに、太鼓・鼓・笛などを演奏するものもあります。
これら、当時の楽器は、儀式の雰囲気を厳かにしたり、邪霊を払うなど、呪術的な意味が強かった
と考えられています。

④ 武人埴輪
武人埴輪とは、甲冑型埴輪に顔が付いたもので、5世紀後半に出現しました。
更に、6世紀には、刀に手をそえる姿が様式化しました。

⑤盾持ち人埴輪


盾に頭を足したもので、5世紀後半に出現しました。
口を大きく開いて威嚇するような、異様な顔つきに見えます。用途としては、魔除けではないかと考えられています。

⑥神聖な動物たち
鶏は闇から夜明けを告げるものとして、水鳥は魂を運ぶ白い清浄な鳥として、鹿は神の使いとして、儀式で重要な役割を果たしたため、埴輪が作られたと考えられています。
「魚をくわえた鵜」の埴輪もあります。
鵜飼を表現した埴輪もあるため、この頃、鵜飼が行われていたのでしょう。
鹿は、写実的というよりは、全体に丸みを帯びた、バンビのようなかわいい姿で表現されています。

⑦ 権威を表わす動物
馬型埴輪の大部分は、くつわ、鞍、杏葉(注2)などの馬具を装着した飾り馬です。
5世紀頃に日本に渡ってきた、馬と豪華な馬具は、当時の有力者の財力と権力を象徴するものでした。
鞍や手綱、あぶみなどの馬具の形は、現代のものとほとんど変わらないように見えるので、驚きました。

⑧ 狩りと儀礼
狩猟は、重要な儀式の1つであったようです。
犬とイノシシのセットや鹿などの埴輪が各地の古墳から出土しています。

⑨ 家形埴輪
4世紀~5世紀頃の家形埴輪は、写実的なものが多いです。
屋根の形状1つをとっても、切妻屋根、寄棟造り、入母屋造り(注3)など、さまざまなものが
あります。
写実的なので、鏡の文様と同様に、当時の建物の形を知るための重要な手がかりとなっています。
また、数棟の家形埴輪を、屋敷のように組み合わせて並べた例もあります。
6世紀頃の家形埴輪は、写実性は薄れ、屋根を高くして抽象的に表現されています。
取っ手のようなものが付いて、家というより飲み物を入れる容器のような形をしているものもあります。
もしかしたら、写実性よりも芸術性を追求したのかなと思いました。


注1:掛衣(かけぎぬ)とは、体に布を掛けて着用する衣服のこと。
注2:杏葉(ぎょうよう)とは、馬のしっぽ付近に付ける飾り金具のこと。
注3:入母屋造り(いりもやづくり)とは、寄棟の上に切妻屋根を載せたもの。

3. 八幡塚古墳の埴輪群像の構成

前回、八幡塚古墳に、54体の人物・動物埴輪群像が復元されて並べられていることをお話ししました。
ここでは、どのような構成で並べられているのかについてお話ししたいと思います。
次のシーン1~シーン7までに分けて、ストーリーが表現されています。
博物館の学芸員が、資料や作品を使ってストーリーを表現、または来館者にメッセージを伝えるのと似ていると感じました。

シーン1:座って行う儀式
王が巫女と向かい合い、巫女が王に坏(注4)を差し出しています。周りに王族
・琴を弾く人・奉仕する女性がいます。
シーン2:立って行う儀式
王と巫女が立って向かい合っています。王は太刀を持っています。
シーン3:武人と力士
武人と力士が何体か集まっています。
シーン4:ニワトリと水鳥
ニワトリが2羽、その後ろに水鳥が6羽、縦に列を作って並び、その横に、
豪華な服装の男子がいます。
シーン5:イノシシ狩り
犬がイノシシを追い、狩人が弓で矢を射ています。イノシシには矢がささり
、血が流れている様子が表現されています。
シーン6:鵜飼い
魚をくわえた鳥と人がいます。
鳥の首に紐と鈴が付けられているため、鵜飼いを表現していることがわかります。
シーン7:王の財産を示す烈
最前列に王、その後ろに鉄のよろい、飾り馬3体、裸馬2体、最後尾に鹿がいます。
なぜ、飾り馬と裸馬がいるのか、財産に鹿が含まれているのかは謎です。


ここまで、埴輪群像の構成を見てきました。

シーン1~シーン7までの全体で、王が行う儀礼や、王が持つ財物を表現しています。
動物たちのかわいさもあって、儀礼とはいえ、堅苦しい感じではなく、楽しい雰囲気に構成されているように感じます。

イノシシや鹿、犬、馬などの動物は、写実的というよりは、丸みを帯びた、ユーモラスでかわいらしい姿で表現されています。
自然に対する畏怖や尊敬を表わすなら、写実的で恐ろしげに表現すると思います。

私は、当時の人々にとって、これらの動物たちは共に生きていく大切な仲間のような存在であったのではないかと感じました。

メイ
メイ

みなさんも、群馬県を訪れる機会がありましたら、雄大な前方後円墳と、かわいいはにわたちを見に、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。


注4:坏(つき)
とは、古代に用いられた飲食の器のこと。

 

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