東京国立博物館 黒田記念館

博物館

黒田記念館について

黒田は、1924(大正13)年に没する際、遺産の一部を美術界に役立てるよう遺言し、これを受けて黒田記念館が設立されました。
館内には、遺族から寄贈を受けた作品を展示しています。

基本情報

◆所在地:〒110-0007 東京都台東区上野公園1-3-9東京国立博物館内
◆開館時間:9:30~17:00 事前予約不要、入館無料
      *ただし、入場規制を行う場合あり。
◆休館日:月曜日(祝日・休日の場合は開館、翌火曜日休館)、年末年始
◆特別室開館日:
『読書』、『舞妓』、『湖畔』、『智・感・情』 以上4点は、特別室に展示。
特別室は、年3回、新年、春、秋に各2週間公開しています。
       2021年10月26日(火)~2021年11月7日(日)
       2022年1月2日(日)~2022年1月16日(日)
       2022年3月29日(火)~2022年4月10日(日)

その他の情報

ミュージアムショップは、ありません。

1階に「上島珈琲店」があります。
営業時間:平日7:30~18:00
     土日祝8:00~19:00
     不定休

 

 

黒田(1866年~1924年)

 “日本における洋画アカデミーを確立した大立者”といわれています。

 フランスでラファエル・コラン(注1)に油彩画を学び、1893年に帰国。
パリのアカデミー(注2)に学び、サロンに入選したという実績と、それまでの日本画壇になかった外光派と呼ばれる、明るい光に満ちた画風のために、大きな話題となりました。

 黒田の新しい画風は、日本画壇に新風を巻き起こしました。
 黒田は、新しい画風を紹介したばかりでなく、洋画家の社会的地位を格段に向上させました。

 また、東京美術学校(現在の東京芸術大学美術学部)の教授として、文展の審査員として、日本の洋画アカデミーを確立しました。

 フランスのサロンに入選した作品は、東京国立博物館所蔵の『読書』です。


 (注1) ラファエル・コラン:1850年~1916年。
フランスのアカデミー画家。
渡欧した
多くの日本人画家を指導しました。

 (注2) アカデミー:ここでは、美術学校や官設展のこと。

黒田記念館を訪ねて

 先日、東京都美術館のゴッホ展のあとに、かねてから気になっていた、黒田記念館へ行ってきました。東京国立博物館の正門を向かって左手へ進んでいくと、最初の信号の右側に、風情のあるレンガ造りの建物があり、それが黒田記念館です。

東京都美術館の建物よりやや黄色味を帯びた赤レンガに見えます。
角の部分が「上島珈琲店」で、その右手の、階段を数段上がったところに、黒田記念館の入口があります。
樹木に囲まれて、閑静なたたずまいです。

入口を入ると、職員の方が丁寧に迎えてくださいました。
盛況のゴッホ展を見たあとなので、ホッと一息つけました。

1階には、エントランスホールとコインロッカーがあり、ロッカーは充分な数があるので、荷物が多い人でも安心です。

利用するときに100円硬貨を入れて、あとでお金が戻ってくる方式になっています。

建物内は重厚な雰囲気で、階段を上がって2階へ行くと、左手に特別室、右手に展示室があります。私が訪問したときは、特別室公開日ではなかったため、特別室の扉は閉まっていました。

目録や解説シートの類は一切なく、廊下に黒田清輝に関する解説パネルと年表が展示されていました。また、展示室入口外左手に、黒田清輝の胸像がありました。

 展示室の天井は白で、ところどころに菊の文様が彫刻されています。
天井全体は格子状になっていて、格子の部分はすりガラスになっており、作品に直射日光が当たらないように工夫されているようでした。

建物の内装と展示作品の作風との両方によって、館内は、厳かでな雰囲気で満たされていました。 展示室内には、職員の方が1名いらっしゃるため、少し緊張しながら、作品を1つ1つ鑑賞しました。

 展示の最初の部分は、裸体画や自画像、肖像画などでした。その中で印象に残った作品は、『久米氏肖像』という油彩画です。
1886(明治19)年にパリで出会って生涯の友となった久米桂一郎氏の肖像で、親しい友人であったためか、優しい雰囲気に描かれています。

 展示のほぼ中央部分に、『瓶花』という大作がありました。カンヴァスに油彩で描かれたもので、花瓶にさまざまな種類の菊を生けてある図です。
黒田清輝は、花を好み、とりわけユリと菊を、滞欧期から晩年までよく描いたそうです。

 『農婦』という作品もカンヴァスに油彩で、別荘のあった鎌倉周辺の風景と生活をモチーフとした、田園情趣漂う作品の1つです。
素朴な農民の姿は、のちの『茶休』や『栗拾い』などの作品へとつながっていったそうです。

 板に油彩で描かれた『嵐』という作品は、鎌倉の別荘で夏を過ごしたときの風景画です。
強風になびく草の葉の動きが生き生きと描かれています。
私の実家は鎌倉なので、これら2作品には、鎌倉らしい雰囲気が表現されていると思い、懐かしく感じました。

 展示室のコーナーの部分が、遺品展示に活用されており、イーゼル、椅子、絵具箱が展示されていました。H型のイーゼルはアトリエ用ですが、絵具箱のほうは、三脚付きのもので、野外でも使用が可能なので、おそらく、野外でのスケッチに使われたのかもしれません。

 展示のラストは、『案山子』という作品で、板に油彩で描かれています。
遠景に山、中央にカカシを立たせ、雲の模様に魅かれて描いたようです。
雲がところどころ光を受けてピンクに輝いたり、黒い部分があったり、自然の一瞬の美しさが見事に表現されていました。

 建物の内部は重厚な雰囲気ですが、外側は、緑に囲まれたレンガ造りの、憩いの場所という雰囲気で、日本の近代洋画の魅力を堪能することができました。

次回は是非、特別室の公開日にあわせて訪問してみたいです。

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