欧米の博物館の歴史について

博物館

欧米の博物館の歴史について ー 博物館の成り立ち ー

今回は、そもそも博物館とはどのような経緯で誕生したのかについてお話ししたいと思います。

現在の博物館の起源は、15世紀から17世紀にヨーロッパで誕生した、「珍品陳列室」または「驚異の部屋」と呼ばれるものです。

これらは、当時の王侯・貴族が、貴重な物や珍しい物を集めて、自らの居館内の一室に並べたというものでした。
その目的は、持ち主の権力や社会的地位を見せつけるためのものでした。

オーストリア・インスブルックのアンブラス城に、「驚異の部屋」が当時の姿に近い状態で残されています。床から天井まで絵画で埋めつくされ、天井からは巨大なワニやサメのはく製がぶら下がっています。

17世紀後半に入り、美術作品に価値が見い出されるようになりました。
「珍品陳列室」や「驚異の部屋」と呼ばれていたものが、
大きく分けて、
①学者や医師によるものと ②王侯・貴族によるものに発展していきます。

学者や医師は、標本を収集・陳列するようになり、王侯・貴族は、主に美術作品を収集・陳列す
るようになっていきました。

18世紀になると、異文化との接触により、外国から未知の事物が大量に入ってくるようになりました。
また、事物を分類して並べるという、博物学が確立されました。
対象物を格子状の区画の中に並べるという、標本整理箱が登場したのは、この頃です。
美術作品の陳列方法も、それまでの、たくさん集めて雑然と並べるという方式から、時代や作家による分類と整理を行って陳列する方式へと変化しました。

ここまでの内容を整理すると、次のような2つの流れになります。

①学者や医師による標本の収集・陳列   ②王侯・貴族による美術陳列室
                 ⇩
対象を格子状の区画に配列する方法    時代や作家による分類と整理
⇩                 ⇩
大英博物館の設立        ルーヴル美術館の設立

ここで、大英博物館とルーヴル美術館設立の経緯について簡単に説明します。

大英博物館は、ロンドンにある、世界初の国立の博物館です。
医師で科学者のハンス・スローン卿のコレクションを基に設立されました。
スローンのコレクション8万点をイギリスの議会が買い上げ、他の蔵書コレクションと合わせ
て収容する博物館の設立を決定しました。
1753年に博物館法により設立され、1759年1月15日に開館しました。
初代館長は、医師で発明家のゴーウィン・ナイトです。

ルーヴル美術館は、1793年に開館しました。
当初は、王室所有あるいはキリスト教の教会財産から没収された絵画を中心に、537点の絵画を展示していました。
その後、フランス皇帝ナポレオン1世が、諸国から美術品を収奪し、フランスに持ち帰ったことで、ルーヴル美術館の所蔵品数は増大しました。
ナポレオンの失脚後、収奪された美術品の多くは元の持ち主に返還されました。
ルイ18世、シャルル10世の統治時代、フランス第二帝政時代でコレクションは増え続け、2万点を超えました。
さらに、フランス第三共和制時代にも、遺贈や寄贈などによって、コレクションは更に増大しました。
ルーヴル美術館では、開館直後から、収蔵品を国ごと・流派ごとに陳列しました。

その後に設立された、ロンドンのナショナル・ギャラリーやアメリカのメトロポリタン美術館でも、ルーヴル美術館に倣って、時系列的に美術作品を展示するという方法を採用しました。
この展示方法により、展示を見て回ることで美術史をたどれることになり、現在の世界の美術館の展示の原型となっています。

さて、19世紀に産業革命が起こると、進歩した技術の成果と、植民地からもたらされた産物を見せるための博覧会が次々と開催されるようになります。
そして、博覧会で展示された出品物を恒久的に収蔵・展示する施設としての博物館が設立されました。
例として、1851年のロンドン万博の出品物のために1852年にヴィクトリア&アルバート博物館が設立されました。
ヴィクトリア&アルバート博物館へはまだ行けていませんが、各国の工芸やデザインなどの膨大なコレクションをもっている博物館だということなので、是非、行ってみたいです。
ウィリアム・モリスのデザインが好きなので、イギリスの工芸の歴史に興味があります。
また、1893年のシカゴ万博の出品物のために、フィールド自然史博物館が設立されました。
その後、異文化に関する資料を収蔵・展示するための民族学博物館が次々に
設立されました。民俗学とは違います。

やがて20世紀に入ると、近代美術館の設立がはじまりました。
まず、1929年に、ニューヨーク近代美術館(MoMA)が設立され、ホワイト・キューブの展示手法をはじめました。
ホワイト・キューブとは、白い壁を背景に作品を浮かび上がらせる展示手法で、現在、世界中の多くの美術館で採用されています。

続いて、サンフランシスコ近代美術館、パリ国立近代美術館、イギリスのテート・ギャラリー、ストックホルム近代美術館、パリのオルセー美術館と、次々に建設されました。

その後、現代アートの美術館が建設されるようになり、パリのポンピドゥ・センターやロンドンのテート・モダンなどがとくに有名です。

以上、欧米の博物館の歴史について、簡単にお話ししました。
その昔、王侯・貴族がお宝を見せて自慢するために作った「珍品陳列室」や「驚異の部屋」からスタートして、標本や絵画をぎっしり詰め込んだ部屋から、分類して陳列するようになり、やがて今日につながる大きな博物館へ発展していったという経緯を知れば、博物館の展示がより一層興味深いものに見えてくることと思います。

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