富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館を訪ねて

博物館

館のあらまし

富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館公式ホームページより引用

 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館(長いので、以後、富岡市美とさせていただきます)は、もみじ平総合公園内に建設され、平成7(1995)年8月8日に開館しました。同じ公園内には、群馬県立自然史博物館もあります。
 富岡市美は、美術館と博物館両方の機能を備えており、近現代美術の重要な作家、郷土に縁のある作家の美術作品や、富岡市と周辺諸地域の考古・歴史・民俗資料を収集、展示しています。
 また、富岡市出身で名誉市民でもある福沢一郎画伯の画業を顕彰・記念する記念美術館を併設しています。

利用案内

開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合翌日)、12/27~1/4
観覧料:一般210円、大高生100円、中学生以下無料
    *企画展開催中は別料金、20名以上の団体は2割引き、65歳以上半額、
     身障者、療育者手帳を持っている方及び介護者1名無料
交通:上信越自動車道富岡IC及び下仁田ICから車で15分。
   上信電鉄上州富岡駅からタクシーで10分。
   JR信越線磯部駅からタクシーで10分。
所在地:〒370-2344 群馬県富岡市黒川351-1 もみじ平総合公園内
電話:0274-62-6200

*公園周辺には、食事ができるところはありませんが、富岡インターから公園へ向かう途中の通り沿いには、スーパーやお店があります。

三輪・夫妻について

甘楽郡下仁田町在住の三輪・夫妻は、公私におけるパートナーであり、これまで主に木を素材とした作品制作を続けてきました。
自然と人間の関係性をテーマに、余白と実体のせめぎ合いの中で、対象の本質的な姿を現出させるミニマムな表現を続ける氏に対し、氏は、モデルの表象に忠実に迫りつつ、あえて古色をまとわせることで、ある特定の存在を普遍性をもった存在へと昇華させていきます。
二人の作品は、まったく異なる性格を持ちつつも、静逸で清らかな空気をまとい、日常の向こう側の世界へと私たちの意識を誘います。
それぞれの作品をひとつひとつ辿ってゆくことで、二人の作品のテーマや表現が静かに呼応していることに気が付くでしょう。
同時に、そんな作品の佇まいは、都会を離れ、自然豊かな土地で日々の暮らしを見つめながら真摯に作品制作に向き合ってきた二人の姿と次第に重なっていくように感じられます。
「三輪・展―富岡から世界を紡ぐー」資料より

富岡市美を訪れて

10月28日木曜日、晴れて、この時期としては暖かい日に、富岡市美へ、はじめて行ってきました。「群馬の博物館・美術館スタンプラリー」がすべて埋まったので、受付で、記念品の、福沢一郎クリアフォルダとポストカードをいただきました。
なお、この日は「群馬県民の日」で、入場無料でした。
そのため、平日の昼間の割ににぎわっていて、小学校の校外学習も来ていました。

富岡市美は、もみじ平総合公園内の、群馬県立自然史博物館と道路を挟んで反対側にあり、ドームのような丸屋根が連なる、ユニークな形状をもつ建物です。
内部は、外から想像する以上に明るく、きれいです。
中庭にも彫刻作品が展示されています。
スタッフの皆さんも、優しくて気さくな雰囲気なので、作品や作家について気軽に質問することができました。
都会の美術館にはない、良い点だと思います。

 この日は、「三輪・展―富岡から世界を紡ぐー」が開催されていました。

企画展のチラシの写真にあるように、夫のさんの代表作はチューリップで、妻のさんの代表作は猫のようです。
富岡市美の公式ホームページでこの猫の作品を見たとき、いわゆる、よくあるかわいい感じのネコとはタイプが違うと思ったのですが、美術館スタッフの方から作品についての説明をうかがったら、魅力ある作品に思えてきました。
西洋美術が、作品の歴史的背景や意味するもの、作家について知ると面白いのと同じですね。

第一会場

第一会場は、夫のさんの作品が展示されていて、作家さんのご好意で、写真撮影が可能になっていました。
 多くの作品の中でもとくに目立つのは、やはり、チューリップの作品です。2015年から制作されはじめた「チューリップ」は、作家を代表するモティーフとなっているそうです。
ゴッホにとって「ひまわり」がそうであるように。三輪さんの「チューリップ」は、一つとして同じものはなく、また、花の中を上から覗くと、水に見立てた樹脂が湛えられていることがわかります。

チューリップ以外の植物も、作家にとって重要なモティーフになっています。観葉植物のようなもの、フキノトウに似ているもの、「古代樹」と名付けられた芽のような植物と、さまざまな形態の植物の作品があり、知らない世界に迷い込んだようで、見ていて楽しいです。

小さな四角い平面に描かれた風景画を集合体のように、1カ所に集めて展示してあるスペースもありました。
1つ1つは美しい色彩で描かれたもので、とくに目についたものは、浅間山に似た山の風景画、美しい青で描かれた風景画、夕焼けのようなオレンジからブルーへのグラデーションで描かれた風景画などです。
描かれているのは「風景のイメージ」であり、具体的な場所を示しているものではないようです。
見る人によって、感じ方はさまざまだと思いますが、私には「人間が表われる前の地球の風景」のように見えました。

 また、少し前にゴッホの作品を鑑賞してきたばかりなので、展示室を入ってすぐのところに展示されていた、黄色の風景画も気になりました。

第二~第五会場

第二~第五会場には、妻のさんの作品が展示されていました。
その中で非常に気になった作品は、作家さんを代表するモティーフの1つである 猫です。
猫の彫刻作品が6体ほど並んでいました。
それぞれが独立した台の上に展示されているため、作品の後ろに回って鑑賞することもできました。とても豊かな体形をもった猫たちで、まるで私自身を見ているようでした。
作品のモデルは作家さんのかつての飼い猫たちだそうです。
木彫だと思えないほど、柔らかさを感じたのですが、これは、木彫の上に漆を重ね、削る作業を繰り返すことで生み出されたためでしょう。

第五会場には、脱乾漆という日本の古典的な技法で制作された「食いしん坊のやかん」と「しじみの家族」という作品がありました。

 脱乾漆とは、粘土で像の原型を作り、その上に麻布を何枚も漆で貼り重ね、乾燥後 内部の粘土を抜いて表面を仕上げる方法で、仏像制作にも用いられます。
東大寺法華堂の国宝、不空羂索観音像も脱乾漆の技法で作られた作品です。
とても手間のかかる技法で、また、経年により形が変化してしまうそうですが、作家さんは、その変化もまた良いのだと話しています。
私は、脱乾漆は、江戸時代以前の技法だと思っていたので、現代も行われていることに驚きました。

 さんは、もともとは、檜の木を削った木彫の作品を多く制作していたのですが、目が悪くなってから、粘土をこねて作る作品や脱乾漆の作品が増えてきたそうです。

 1階の展示室に、ふくよかな猫の頭に蚕がのった、「」の作品が並んでいました。
以前に、群馬県立歴史博物館の常設展示室で、「新田岩松家の猫絵」を見ました。
蚕やまゆをネズミが食べてしまうことがあり、ネズミを食べてくれる猫の絵を養蚕農家の壁に貼ってお守りにしたそうです。
この「」は、養蚕農家の猫絵を表現しているもので、養蚕業が盛んであった群馬県にとって大切なものです。

さいごに

今まで、現代アートは、難解だし、強い色彩で描かれている作品が多くて、どちらかといえば苦手だったのですが、作品の背景や、作家さんが作品に込めた思いなどを知ることで、作品を身近に感じることができ、自分なりに受け止めることができた感じがしました。
三輪さんのチューリップや、さんの猫ちゃんたちに親しみと魅力を感じました。

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